Please told me

昇華できなかった戯言

甘駆ける

「欲しい物」が「欲しかった物」に変わる瞬間というのはだいたい、手に入れた瞬間であろう。物欲というのは果てなく廻る。恋みたいなものだな、とふと思った。物欲は生きている限り決して埋まらない。「欲しい物」は手に入れた瞬間から終わりに向かいすぐに「いらないもの」になってしまい「手に入らなかった物」はいつまでも愚図愚図とキラキラして見えそれを探し続けて素敵なものとして心の中に射止められてチクチクと痛み続ける。所有欲のみで欲しがり、なんとしてでも手に入れようとする私はどこかおかしいのだろう。
Hとはじめて出会い何年経っただろうか、私は未だHを欲しがりHもいつかそれを受け入れようとしたけれどその時にはもう手に入れてしまえば終わりに向かうしかないのをHも私も気付いてしまっていたから互いに心地良い距離でいるにとどまっている。
アクセサリーを山の様に買うけれど私の首は1本しかなく指は10本しかない。ピアスの穴も5個しかない。けれど今、どうしても欲しい物がありそれは決して手に入らないとわかっているからこそ執着しているのだ。精神的にマゾヒストなのだろうか、それともコレクターなのだろうか。誰も持っていないものを欲しがり手に入れても大切にしまっておいて誰の目にも触れさせないのが好きだ。Yはそんな私をよく知っていて1度欲しがった物を安々とは諦めないのをとても上手くいなす事ができる。
恋というのは上手くいっている時は幸せで失えば悲しくて叶わなければ辛くとも楽しいととても単純なシステムだ。けれどそれ以外になるとそんなに単純ではなくなり、Yと私と買い物は不思議なバランスを保っている