Please told me

昇華できなかった戯言

弦を弾く

弦楽器を弾く男性が好きだ。とてもセクシーだと思う。女の子で嫌いだと言う人はいないのではないかと勝手に考えている位で弦楽器を自分だけのために弾いてくれる人にならば殺されても良いと思う。馬鹿なのかロマンチストなのか皮一枚で分かれる考えをしてい…

甘い声と無機質な部屋

Sは海が好きだ。それはきっと私の知らない思い出を海に秘めているからだろう。Sのバイクの後ろは私の特等席でいつもそこに座り、冬は寒さに凍え夏は暑さに倒れそうになりながら海を見に行く。互いに何も話す事なく寒さ暑さに耐えながらみつめる海は美しく悲…

嘘のない恋

Kと恋愛をするのはとても難しかった。Kは言葉を選ばないし嘘を吐かないと思いきや平然と嘘を吐く(後に気付いたが彼は保身が上手すぎたのだ)し何より「さみしかったから」という理由で情緒不安定になり病身の私を責めたのだ。幼すぎる私よりうんと年上のKを…

生きる事とみつけたり

私達の周りには死が蔓延っている。それは当たり前の事であり人は生まれた瞬間から死に向かって人生という暇を過ごしているだけだと考える人もいるくらいだ。しかし、もし身近な死が突然訪れた時に耐えられる自信はあるだろうか。たとえそんなに仲が良かった…

あなたの愛した偽物

人を好きになる基準とはなんだろう。己の弱さを許容してくれる事がまず第一になるのではないだろうか。そして次に一方的な愛でなくなるのには相手の弱さを許容してあげられる事が必要不可欠になる。その後に色々な理由がついてまわりそれらしい愛の形を作り…

甘駆ける

「欲しい物」が「欲しかった物」に変わる瞬間というのはだいたい、手に入れた瞬間であろう。物欲というのは果てなく廻る。恋みたいなものだな、とふと思った。物欲は生きている限り決して埋まらない。「欲しい物」は手に入れた瞬間から終わりに向かいすぐに…

キス・マイ・リップ

東京の初雪は1年の始まりの日に降った。ほんの一瞬心を駆け抜けるように激しく降り、ぴたりと何もなかったように止んで日常を取り戻す。それは私の産まれたところで降るスコールのようだった。雪と違い1年間のほとんど、微かな雨のにおいがしたら急いで洗濯…

桃の缶詰

年末は風邪をひいて過ごした。仕事も小説も全て手に付かず本当にたくさんの人に迷惑を掛けてしまっていつも年末年始は体調を崩しているのでもっと自己管理をしっかりしなければなと熱でぼんやりする頭で考えながら眠っているとYは年末進行で忙しい中ちょくち…

金のたてがみ

SSはライオンのような人だった。長く綺麗な陽に透けるたてがみのような黄金色の髪、しなやかで無駄がない筋肉のついた肉体、強さを誇示するように美しい獣の毛皮や革を着ておりその見目はとても華がありよく喧嘩をし、負けるのを見た事がなかった。私達の絶…

目元の笑い皺

音楽が好きだ。歌うのも、聴くのも。夏には大きなフェスに行くしライブも体調が良い時には行く。そんな中で忘れられない思い出があり特別なアーティストがいる。それはジャパニーズスカの代表、KEMURIである。数年前のライブの時にYが仕事で遅れるというので…

バタースカッチ・ラヴァー

Iと出会った時私達はまだ互いに幼くふたりで遊ぶ事は何も不自然ではなかった。義務教育にあがるより前から当たり前のようにそうしていたのでそれはずっと変わる事がないと思っていた。すぐ近所に住んでいて母親が仕事から帰るのが遅いIの家でさみしさから逃…

甘い蜜と蟻とアリス

洋画や海外ドラマを観ていると日本人の女の子にはあまりないキュートさが幾つも溢れていて心を奪われる。まずひとつは表情筋の違い。ウインク、片眉を吊り上げる、口の端を片方だけあげて皮肉に笑う、鼻を鳴らす、唇をつんと尖らせる、めまぐるしく変わる表…

華麗なる裏社会の蔓

マリファナを買うには蔓が伸びなくちゃあいけない。栽培と一緒なんだ、あれは放っておけばいくらでも生えてくる雑草みたいなものだから水と光さえやってれば育つ。楽だけれど栽培は所持より罪が重い、ハイリスクハイリターンだ。んで、売るのだって罪が重い…

泣き顔

浦沢直樹先生の描く泣き顔がとても好きだ。いつだったかNHKの番組で「涙を描かずに泣かせる」と言われていてなるほどと思ったが鉄腕アトムのリメイク「PLUTO」での登場人物の泣き顔を見て、表現そのものだ、と驚いたものだった。人の形をしたロボットが泣く…

小池一夫先生のお言葉。

個人的なメモです@koikekazuo: 漫画を描く時に陥りやすいのが、作者自身のメッセージを過剰に込めてしまう事である。作家のワタクシ性は、作品に自然と滲み出る。読み手はプロパガンダが読みたい訳ではない。エンターテイメントが読みたいのだ。どうすればよ…

形とか音とか色とか

言葉に関わる仕事をし小説を書いている私が本当に好きなのは歌う事だ。何を間違えたのか中学高校と声楽科を専攻し大学も間違えて進み中途半端に終わった。私の声は幅広くアルトからソプラノまで歌え、教師達は重宝し欠席者のパートを歌わせたので他の生徒と…

みつあみ

すこし赤茶色くて長い長い髪をあっという間にふたつのみつあみにしたSは美容師になりたてでその手はシャンプーやパーマ液でボロボロだった。ほら、簡単ですよ。あなたの髪は傷んでいなくてとても素直だ、と心から愛おしそうに言ったのを覚えている。採寸をし…

ビューティフルドリーマー

「子」のつく名前が好きだ。私は年齢の割に酔狂な名を親に与えられたので古風な名前に憧れた。鏡を見たらひどい顔をしていたのでもう寝よう。いつになったら風邪は治るだろう

C

ノイタミナの「C」というアニメがとても好き。アニメや漫画は突き抜けて非現実的で可愛くて到底普通の暮らしとは無縁な物が良いと思う。女の子のキャラクターデザインが飛び抜けていたり当たり前みたいに氾濫してるけれど空を飛べたり猫耳や獣人だったりとて…

迷う事すらできないの

可愛いものや素敵なものが大好きでけれど手に入れられるものとそうでないものなら後者の方が圧倒的に多くてたまにとても悲しくなる。いつだったか行ったどこかのミスタードーナツの店内に大きなメリーゴーラウンドがあった気がする。人は乗れなかった。私は…

冬の水槽

小説を書いています、昔賞を頂いていますというと社交辞令半分興味半分知り合いにそんな職業がいるのすごいという得体の知れない優越感のようなもの数滴で「読ませてください」と言われる事が多く、それがとても苦手だ。本業はいくらでも見て欲しいと思う、…

神々の砂場砂漠の宝石

風邪をひいてワガママを言えるようになったのはYと暮らし始めてからだ。身体が弱く喘息体質でいつも体調を崩していたので親はすこしの風邪位では騒ぐ事もなければ面倒を見る事もなかった。いつもなら風邪をひくと何もしなくて良いのですこしのワガママを言う…

真夜中という背徳

夜型の人間がこの時間に起きているのは深夜3時に小学校低学年生がコンビニにいる位違和感がある。Wさんに叩き起こされてとても不機嫌に文章を書いている。彼はいつだったろうか、「瞬発的に面白い事を発信できて文脈も整っている人は意外と表現する仕事には…

3度のコール

カタカナ職業の人ってチャラいよね。私もYもよく言われ無難な返答しかできない事なのだが言った本人は合ってるでしょ?と得意顔をしているので困ってしまう事が多い。そんなの個人差があるし捉え方次第である。それにそういう人の言うカタカナ職業というのが…

荊の上を歩く猫

延々ひとつの物語を書いていると登場人物達がひとりまたひとりとどんどん勝手に好きな道を歩いていってしまうので今、彼ら彼女らを必死で追い掛けて戻ってきてもらおうか好きに行ってもらおうか悩むのにほとんど1日を費やしてしまっていてとても焦っている。…

15歳という特別

尾崎豊の兄が「弟が『十五の夜』で歌った盗んだバイクとは私のバイクです。『I love you』で歌った軋むベッドは弟の部屋のベッドです」と発言した時、なんとも言えない気持ちになったのをよく覚えている。どこでどうしてそんな発言を聞いたのか覚えていない…

夜に霞む

夜が好きだ。私の祖先は多分夜行性の動物なのだろう。静かで暗くて空気が冷たくピンと張り詰め昼にはうるさい位の人々の営みが眠りに霞むようで作業に没頭できる。vapeを吸い続けると必ず頭痛がしてその頭痛も好きだし薬を飲んだ後眠たいのをぼんやりやり過…

呼んで

夕方起きて映画を観ながら小説を書いてふと、思う。今年はもう終わるのに何か一冊でも本を読んだだろうか。読んでいない。私の書く物語はすべて、きちんと生きていた時に根付き芽吹いているものをただ刈り取っているだけだ。いつ終わりが来てもおかしくない…

くだらなく煌く宝物

いつもそんな服着てるのに髪は結ばないんだね。小学生の頃、母の趣味で乙女チックな洋服を着せられていた私に同級生が放った言葉はまるで散弾銃のように私の心を粉々にした。いつの時代だって子供というのは悪気なき悪意の塊だ。人間は産まれてきた時は天使…

何年目かわからない愛

半分寝ている位の時に電話が鳴り出るとYが駅前についた、何か買って帰るかと聞くので素敵なものを買ってきて。と言ってやっと起き、顔を洗い歯を磨いた。私にかかってくる電話は両親かYか病院か編集さんか仕事かIかSだけととても限られている。私もYも素敵な…